インフォメーション
2021-09-19 08:38:00
限りがある中で支えること
ご家族から「子どもからの要望にどこまで対応してあげればよいのか」というご相談をよくいただきます。
子どもを支える方法には答えがありません。一人の子どもに良かったから別の子どもに合うかというとそうでない場合も多くあります。
一番大切なのは「対応することでお互いに苦しくならない方法」を選ぶことです。そのために相談業務の中では「枠組み」があります。おおよその対応できる時間を先に相手に伝えてその中で相手の希望を伺う仕組みです。これは日常の対人関係、親子関係にも応用できます。
例えば相談業務の中で「毎日相談にきてもいいですか」とご希望があった場合、毎日相談を受けることがお互いの関係性にどう影響があるかを考えます。休みの日に急にご相談されたい場合も不安の強い方にとっては「対応して下さる人」はよい人で対応されない人には「冷たい人」という印象をもたれるかもしれません。
成熟した安心できる関係性では「できないことはできない」と断ることができます。ただ子どもの心はそこまで一気には強くなりませんのであらゆる方法で相手との関係性を確認するために強い要望が生じることがあります。何かのテーマを乗り越えようとする際にはよく生じる状態です。そして子どもが乗り越えるテーマであるはずなのに周りが頑張って対応しすぎると結果的に子どもは困らない状況が生まれ、子どもの課題なのか親の課題なのか学校の課題なのか支援職の課題なのか、課題の本質が見えなくなり支えている側が苦しくなるという難しい状況が生じます。医療アドバイザーの興野先生もよくおっしゃりますが「助けすぎず子どもが困る状況をつくり子どもからサポートを求める力を育てる」ことが大切です。
とはいっても子どもによってストレス耐性も違いますので皆同一に対応するものでもありません。どこで線を引けばよいのかどこまで助けてあげればよいのか本当に難しいですね。
まず「自分にできること」を子どもに示し、その中で子ども自身がどこまでできるのかを子どもと一緒に確認しながら子どもの要望や思いに無理のない範囲で対応することだと思います。もし相手が求める以上に対応しすぎて関係性を維持しようとしたり断りきれない不安が続く場合は「自分自身の中に相手から見離される不安」がベースにあることがあります。一見、子どもや相手のテーマにみえますが、親御さん自身、相談を受ける側自身のテーマであることもあります。苦しくなっても見離される不安で繋がる関係性を続けてしまう傾向が続くと共依存関係へ移行していきます。大人になってからも続く苦しい関係です。「相手にも事情がありできないことがある」ことが分かるようになると人間関係は安定します。
子どもと親、相談する人と受ける側の間にきちんと柔らかい心の境界が見えるようになると安心して相手に自分の思い、要望を伝えられるようになります。逆に自らの関わりで何とか改善しようと思い心の境界が見えなくなると子どもは安心して気持ちを表出できなくなります。どこまで自分に気持ちを出してよいのか、限りのない心の世界だからこそ境界を接する側でもてるかがポイントです。
学校にいく、いかない、考える。人に会う、会わない、考える。誰かとやりとりする、しない、考える。子どもが決めていいことは子ども自身が決めれるように考える時間をきちんと確保できるように応援していければと思います。そのためには応援する側の人間が「自分にはここまではできるけどこれ以上はできない」ということを子ども本来の力を信じて十分に伝えていくことが大切です。そして断れない関係の人とは周りの力を借りてうまく距離を保つ。自分が健康であり余力があれば人の力になれる。自分が苦しい時は自分の力は自分のために使う。自分が安心できる方法がきっと子どもたちの安心に繋がります。