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2021-09-10 06:21:00
興野医療アドバイザーから皆様へ
子どもの支援をしていると、さまざまな悩みを持つ子どもと家族と出会います。精神科医療者の立場から、いちばん困るのが、「学校に行けない」という悩みです。もしも病気が背景なら、検査や治療をして状況が改善することもあります。集中力や学習効率などの問題にも一部は関与できます。ですが友人関係や教員との関係、家族背景などが大きな要因の場合、病院からできることは少ないです。せめて日中の通所先の提供だけでもできないかと模索してはいますが、なかなかうまくいきません。
学校に行きづらい子どもたちには、3つの支援が必要だと思います。①日中活動の場の確保。これは引きこもりを防ぎ、生活リズムを保つことにもつながります。②話し合える仲間の確保。対人交流スキルは将来どんな生き方をするにしても求められますし、経験を積まないと身に付いていかないものです。③学習環境の確保。基礎的な学習はさまざまな技術を習得して将来活かすための土台となります。
来実スタッフが中心になって進めているオンライン学習の試みは、これらの支援ニーズに応えようとするものです。理想にはほど遠く、あくまでも小さな一歩です。ですが小さな一歩に大きな意味があります。まずは学習支援を行うことで、そこから派生して居場所作りや仲間作りが進んでいくことがあります。大事なことは、いままでは支援を受けられていなかった子どもたちにも、少しでも支援の手が届くようになるかもしれないということです。
時代の変化と共に学校のあり方も変わっていくでしょうし、子どもたちに求められる「学ぶべきこと」も変わっていくでしょう。ですが「学校で学びづらい子どもたちに、どんな学びを提供できるのか?」という社会的な課題は残るでしょうし、それを考えていくことは大人の責務だと思います。決まったやり方が確立されていない以上、手探りにはなりますが、だれかがチャレンジしないと前に進みません。その勇気ある人の1人が前村心理師です。この小さな挑戦を応援して、大きな支援の形に育てていきたいですね。
医療アドバイザー 興野康也